7と4の不思議

小学校入学前の娘と風呂に入っているときのこと。

「いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、なーな‥‥」
「ん? 『なな』じゃなくって『しち』だよ」
「そっかぁ。‥‥でも反対から数えるときは『なな』だよね」

 そう言われて心の中で確かめてみる。
「じゅう、きゅう、はち、なな‥‥!」確かにそうだ。

 もう少し続ける。
「ろく、ご、よん‥‥!」
「おっ!」と思っていると、娘がさらに追い打ちをかける。
「『よん』もそうだよね」
うーん、これは娘に1本とられてしまった。

 どうしてこんな具合になるのだろう。

 まずは常用漢字表の音訓を調べてみる。

数字10
音読みイチ
イツ

サン


ロク
シチ
ハチ
キュウ
ジュウ
ジッ
訓読みひとつ
ひと

ふたつ
ふた

みっつ

みつ
よっつ

よん
いつつ
いつ

むっつ

むつ
むい
ななつ
なな
なの
やっつ

やつ
よう
ここのつ
ここの

とお


 1から10までの数字を連続的に言う場合は
「イチ、ニ、サン、、ゴ、ロク、シチ、ハチ、キュウ、ジュウ」のように音読みでそろえることになる。

 また、数を数える場合は
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお」のように訓読みでそろえる。

 したがって「イチ、ニ、サン」と音読みで始めた数え方の中に「よん」と「なな」という訓読みが入るのはおかしいということになる。

 でも、現実には10から1に逆カウントするときには
「ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ」である。

 こういう数え方をするには何か根拠があるに違いない。

 そこで見つけたのが「NHK放送のことばハンドブック」(昭和62年)である。

 それによると、「耳で聞いて紛らわしくないように、数字の読み方を次のように決める」とあり、下の表のようになっている。

数字10
読み方レイ 
イチ 
ニ  
サン 
ヨン 
(シ)
ゴ  
ロク 
ナナ
(シチ)
ハチ 
キュー
(ク)
ジュー

 確かに「シ」「シチ」「ハチ」は聞き間違える可能性もある。そこで間違いを防ぐために「4」と「7」については訓読みを使うようにしたのだろう。

 数を連続でカウントするときには、全体の流れがあるので音読みか訓読みに統一するのだろうが、数字を1つずつ読むときには、聞き間違いがないように、「」「シチ」を使わずに「よん」「なな」を使うようになったものらしい。

 そういえば宝くじの当選番号発表のときなど、数字を1つずつ読むときは
「4」(よん)・「3」(サン)・「1」(イチ)・「7」(なな
のように言うし、

「3475円」は「さんぜん・よんひゃく・ななじゅう・ご・えん」と読む。

 10から1までを逆カウントする場合、「イチ、ニ、サン、シ、ゴ‥」のような連続した流れとしてとらえるのではなく、1つ1つの数字を読み上げるというとらえかたのため、「よん」「なな」を使うのであろう。

余談1
 「0」は「ゼロ」ではなく「レイ」である。「ゼロ」という数だけ英語になるのはおかしいのだが、実際には電話番号を言ったりするときには「4080」(よん・ゼロ・ハチ・ゼロ)という具合に英語も音訓もごっちゃに言うことも多いようだ。あまり正しい日本語とはいえないが仕方がないことかもしれない(私はなるべく「レイ」というようにしているが‥‥)

余談2
 童話の「おおかみと7ひきの子やぎ」の場合は「しちひき」と読むのが正しいのだそうだ。日本語としては「ななひき」でも「しちひき」でもいいのだが、このように固有名詞的になった場合は読み方が固定される場合もあるようだ。次の言葉などもそうである。

「七草」(ななくさ) 「七光り」(ななひかり) 「初七日」(しょなのか)
「四十七士」(しじゅうしちし) 「七福神」(しちふくじん)
「七味唐辛子」(しちみとうがらし) 「四天王」(してんのう)
「四面楚歌」(しめんそか)「真四角」(ましかく)
「三寒四温」(さんかんしおん)